2022年11月6日9時、夢のような時間であったWCSの最後の1試合:T1 vs DRXのBO5がつつがなく執り行われました。
そして、この試合は間違いなく過去で一番「ドラマティック」な試合であったと思います。試合前は軽い気持ちで「3-0とかだとつまらないからフルセットまで行ってくれないかな~」とT1を応援しながら見ていたのですが、試合が進むにつれて単純なT1の応援者ではなく、この素晴らしい2チーム双方のファンとして引き込まれてしまい、最終的には試合の最後には思わずDRXを応援している自分が居ました。
そもそも、ですが、この決勝戦にはドラマ要素が多すぎました。
・Fakerの帰還
⇒2016年以来6年ぶりのFaker選手の4度目の優勝が懸かった世界戦決勝。三度世界を席巻し、その後しばらく世界戦から遠ざかっていたFakerが若手を従えて満を持してのWCS制覇へ王手!ということで「Fakerはこのまま伝説になるのか?」この一点だけでも注目度が非常に高い決勝と言えます。
・Deftの挑戦
⇒LCK屈指のADCと言われながら7度目の挑戦で初めて頂点への切符を掴んだDeft。来年引退(兵役?)等の噂もありこの挑戦は「Deftのラストダンス」とも呼ばれ、RNGやTES、Gen.Gなど強豪を打ち倒すたびに”ラストダンスはまだ終わらない”とつぶやかれていました。とはいえ、まさか決勝までダンスが続くとは誰もが思ってもみなかった事態でもあり、誰もがこの結末に注目しています。
・このFakerとDeftがなんと同じ高校の同級生
⇒そもそもこの世代で現役の一線で残っているプレイヤーがもう殆ど居ないのに、決勝で相まみえるこの二人が同じ高校の同級生。それぞれの想いが募ったこの対決は運命だったのか。。。
・Keriaの決断
⇒現在T1で間違いなくキーマンの一人となっているSUPのKeriaは実はかつてDeftに「一緒に戦わないか?」と声をかけてもらったことがあり、同じLCK、DRXの土壌でLOLを学んだ時期もあったとか。そこからT1でFakerと共に邁進し、決勝で敵としてDeft&DRXと対峙する、という。ここにもまた一つのドラマがありました。
・DRXのSUP:Berylの凱旋
⇒今回DRXのSUPとしてWCS2022に参戦しているBeryl選手は実は今回を含めて3年連続でWCSの決勝へ進出している選手です。この実績ひとつとっても凄まじいプレイヤーであることが伺えます。
しかも、去年と一昨年はLCKの雄Showmakerと共に名門DWG(現DK)の一員としての参加でしたが、2022年は一気に格下のDRXへ移籍しLCKシーズンでは春:5位 夏:6位と苦しみ、プレイオフで何とか4位枠を確保しこのWCSにはプレイインから駆け込み参加。Showmakerらがグループステージから悠々参加していることなども考えると、このBeryl選手の立場においても、大きな葛藤とドラマがあったのではないかと思います。
と、事前のドラマ要素のおさらいをするだけでも本当に話が尽きない、そのままドラマ化できてしまうようなそんなWCS2022決勝となりました。
もう結果もあちこちのタイムラインから流れている頃でもありますので、ネタバレなども特に気にせず記事を書いていますが、試合展開は多くは語らず(とはいえ、後程、結構語ってはしまうのですが。。。)先ずは見て欲しい気持ちで一杯です。
試合はTwitchでもYoutubeでも、どちらでも視聴可能ですが今日はYoutubeの方をご案内。(意外とこの5GameをYoutube上で辿って順番に見るのが面倒だったので、自分用に1記事内に敢えて全ゲームを張り付けました。。。)
【Game1】
【Game2】
【Game3】
【Game4】
【Game5】
この5試合を通じて本当に強く感じたのが
「どちらのチームも本当にチャンピオンプールが豊富でバンピックが強い」
ということでした。
そして、それらを踏まえてもDRXのバンピックは(これは下馬評を考えると本当に凄いことだと思うのですが)T1よりもさらに一歩、上を行っていたように感じました。恐らくですがBeryl選手のSUPのチャンピオンプールの広さと試合後半のグローバル&マクロ視点まで考慮した立ち振る舞いの幅の広さ、そして、「何をしてくるかわからない意外性」のような”怖さ”がこのDRXのバンピックの強さの背景には存在したのでは?と思います。最終戦のバード選択を見て改めてそう感じました。
上記を踏まえ、これからVODを見る方には以下の点を意識してバンピック見てもらうと良いかもしれません。
・エイトロックス&エイトロックス対策の存在
⇒この大会を通じて終始エイトロは強ピックとしてBan or Pickの対象でした。それに対してT1のZeus選手のヨネだけはその解として機能してきていたのですが、このBO5でもそれが機能するかどうか、また、ヨネを取らせてくれるかどうか。
・SUP枠&BOTレーンの組み立ての方向性
⇒この決勝~準決勝辺りまでで重要なBOTピックの一つとしてヴァルスの存在があると思っています。もっと言うと「BOTをポーク構成にするか打ち合いの強い構成にするか」がその前提としてあり、その解の一つとしてヴァルスと対ヴァルスがある気がしています。
T1のGumayusi選手はこのWCSシーズン後半に向けて尻上がりに調子を上げて来ていて、その背景にはルシアンの存在があります。このルシアンを完全Banした上で、射程の長いヴァルス・ケイトリン・エズリアル辺りでポーク合戦に引き込み、KeriaのメイジSUPピック(ポークの相棒としては強いが後半の集団戦やグローバルな視界管理では弱め)を呼び込み、後半のオブジェクト管理をしづらくした、というようなDRXの戦術を個人的には感じた次第。ただ、メイジSUPは勝っている試合ではとても強く機能してしまうので、前提としてTOP&MIDがしっかり対峙し得る、というのが重要でもあり、自チームのTOP&MIDを信頼した構成を取っていた、ともいえると考えます。
・Zeka選手にサイラス&アカリを使わせるかどうか
⇒DRXのZeka選手はサイラスとアカリがとても強い(実際は結果だけ見ると他もしっかりと十分強いのですが、この決勝トーナメントまでの実績を見ると特にこの2チャンプは目立っていました)Faker選手と対峙する重責を担うZeka選手に、この辺りの得意Pickを割けるかどうか、また、チームを優先して得意Pickよりも射程やCCに長けたアジールやビクターなどのメイジチャンプを選択するか、などMIDピックもこの辺りが注目です。
・JG枠についてはDRXのPyosik選手が攻めるか・守るかという視点で見ると面白い
⇒個人的には対Gen.G戦でPeanuts選手のグレイブスを圧倒していたキンドレッドの動きがとても印象的なPyosik選手ですが、チームピックに寄せたマオカイやメタでスタンダードなヴィエゴ、グレイブスなどもしっかりと使える選手です。BOTレーンや各ソロレーンにこれだけ花形選手が敵味方介在しているこの試合で、自身の立ち位置をキャリーなのかFor Teamなのか、どの立ち位置でPickを選定し、動いていくのか、そんな視点で見守ると面白い試合が多かったように思います。
試合の結果や印象的なシーンはこの後もTwitterなどで多くが出回ると思いますので、あえて皆が触れそうなメジャーな箇所には触れず、個人的に盛り上がった事前の情報(ドラマ要素&バンピック要素)に特化して記事を書きたい!と思っていたので、長文で迂遠で恐縮ですが、書かせて頂きました。
そして最後にもう一つだけ、ちょっと試合展開のネタバレも入ってしまうかもしれませんが、このBO5実は僕は最初はT1を応援していました。でも3戦目にPyosik選手とDRXに起きたある悲劇から物凄く感情移入をしてしまい、後半はDRXを(特にPyosik選手を)応援する気持ちで一杯になりました。しかし、応援しながらも「余程心が強くないとこれは挽回できないだろう。。。普通は心が折れてしまうような出来事だ」とやや悲観的な気持ちで応援を続けていたところ、しっかりとDRXの各選手は心を奮い立たせ、良い形でその悲観的な観測を裏切り、最後までこの大舞台を「楽しみながら」BO5を走り抜けたのがとても印象的でした。
BO5、特にフルセットは「心が強いほうが勝つ」と私は思っているのですが、まさしくそれを体現していたのが今年のDRXだったのではないでしょうか。正直、LOLの大会でこれだけ感動して心が震えたのはWCS12年の歴史(と言っても、私がしっかり見てきているのはここ6年位ですが。。。)の中で本当に初めての経験でした。
きっとどの選手も、賛辞が欲しくてやってるわけではなくて、自分がやりたいことをやりきって、ただただ勝ちたくてやっている。それは痛いほどわかっているので、飾り立てた言葉を贈る気もなく、ただ、純粋に「おめでとう」と「ありがとう」をこの両チームに送りたいと思います。
そして本当の最後に、、、余談になりますが(笑)Beryl選手が選んだチャンピオンスキン候補のチャンプはアッシュで、RIOTのデザイナーに「別ゲーのキャラをモチーフにしてほしいってのはアリ?」と聞いて、OKと返答が来たので下記のモチーフ画像を差し出したとのことです。本人は「アッシュを選んだ理由は恥ずかしいから内緒」と言っていたのですが、各所のTwitterでめちゃ出回っててウケました。一応画像はコチラ↓
これは何のゲームだろう、恐らくですが崩壊3rdのエリシア?かな?
と、こんなちょっとしたエピソードのひとつひとつまで、各選手の人柄とLOLを楽しむ姿勢が垣間見えてクスっとしてしまった次第。
ほんのちょっとしたことの積み重ねですが、私はこの大会を通じてDRXの各選手の背景に改めて触れ、どの選手にも本当にそれぞれ人間味とバックボーンがあり、単なる優れたLOLプレイヤーである以上の人間的な魅力を強く感じた気がしています。どんな突出したCSやMontageよりも、試合の合間にチームを鼓舞して、勇気づけ、支えあい、そして目一杯このLOLというゲームとその大舞台を楽しむ。そんな姿勢が一番出ていたのがこのDRXというチームであった気がするし、それがそのままこのBO5を制する「心の強さ」に繋がったともいえる気がしています。
これは、かねてから私が目指していた「Eスポーツをただのゲーム大会ではなく本当の”スポーツ≒文化”へと昇華していきたい」という想いからするととても喜ばしい出来事であり、色々な意味でとても嬉しいWCSとなりました。
改めてですが、T1とDRX両チームのプレイヤー、そして、WCS2022に関わった全てのチーム&スタッフの方々へ、感動と楽しみをありがとう。これからも、応援してます☆