セミファイナルを制したのはT1とBLG LPLキラーのT1連覇なるか?
Worldsのノックアウトステージもいよいよ最後の大一番を残すのみとなった。昨年の覇者であるT1がLCKシーズンの不調などどこ吹く風とばかりにGen.Gを3-1で下して決勝進出を決めた。
反対の山のLPL対決は順当にLPLシーズン中上位で終えたBLGが安定感のある3-0でWBGを下してこちらも決勝進出を決めた。WBGは昨年のファイナリストだったので今年も、そして今年こそ、という想いもあったのだろうが筆者から見てBLGの方がスイスステージ含め地力は一枚上の様に見えた。
そんなわけで決勝はこの記事を書いている本日、11月2日の23時開始予定。本番まで残り20時間を切るところまで迫っている。T1ファンの筆者としてはもうただただ見守るだけ、という気持ちではあるのだが、ここで最後に準決勝の対GEN戦のポイントを簡単に振り返っておきたいと思う。
LCKサマーを見ていたファンの面々からするとシーズン中は圧倒的にGENの方が優勢でとてもではないがWorldsでこれだけの結果になると思っていなかった人も多いのではないだろうか。一体何が決め手になったのだろうか?
「最新のメタ」に適応したT1のバンピックの強さに注目したい
一概に勝因と言ってもLOLは複数の要因が絡み合って結果に結びついておりなかなか一口で言い表せるものではない、と思う。しかしそれでも、このT1vsGENの4試合はなかなかに特徴的な傾向を見せた4試合であったようにも思い、LOLの面白さ、奥深さを再認識する対戦でもあった。
【1試合目】
1試合目は10分ごろまでキルカウントは0-0という静かな立ち上がりを見せた試合だった。オブジェクトファイトも拮抗した展開が続き、全4戦中一番緊張感のある試合だったようにも思う。
ただ、中盤以降の流れを見た所感として、純粋なレンジADCが不在でレネクトン、スカーナー、サイラスにレオナという近接戦主体のGENに対してディスエンゲージ能力に長けたレナータ、ULTを絡めたCCチェーンを決めやすいアッシュ&ヴァイの構成が綺麗に刺さった1戦だったように感じる。
ヨネとグラガスも双方ブリンク持ちでありファイター構成でCCを絡めたオールインをしたいGENからすると戦線の出入りをT1側が自由に動ける反面、GEN側はアッシュのスロウを食らいつつ非常に苦しいにらみ合いを何度もしていたように思う。メタをしっかりと把握して構成を組み上げたT1の快勝と言えるセットだったのではなかろうか。
【2戦目】
2戦目は打って変わってGENの圧勝だった。これも筆者としてはバンピックを終えた時に不安感を感じた構成だった。キンドレッドはマークを集めることでレイトが強いチャンプの印象だが、実際はそれだけではなく、序盤でもブリンク持ちのレンジJGとしてガンガン敵JGに入っていける強さを持っている。ただ、これを活かすにはある程度レーンプッシュ力があり序盤から試合を展開できるMIDチャンプとの組み合わせが重要なのだが、それに対してサイラスは序盤非常にマナがキツくJGに助けてもらう側のチャンプという印象だ。
対照的にGENのMIDチャンプであるアーリはダメージディールとスケールこそ他のチャンプに譲るもののマナ持ちの良さとレーンプッシュ力、優秀なCCを備えており、JGや他レーンへの寄与度が非常に高いチャンプだ。また、GEN側の用いたスカーナーというJGチャンプはタンキーで体力があり、壁抜けできる特殊な移動特性からモビリティが高く、キャリータイプのJGに対して非常に相性が良い(いなしやすい)チャンプと言える。このMID&JGの組み合わせを見た時に正直、少しJG周りの少数戦は厳しそうに感じた。
そして、この2戦目においてはTOPとSUPがいずれもタンクタイプのチャンプであったことからMIDとJGが仮にコケるとダメージソースが全く足りなくなり、勝負が成立しなくなる。T1側からすると上手く序盤をいなしつつサイラスやキンドレッドが強くなる時間帯まで試合を伸ばしたいところだったがGENのJGであるCanyonとMIDのChovyはそれを許さなかった。MIDの最終Statsの差を見るといかにアーリが気持ちよく動けていたかが見て取れる結果となった。
【3戦目】
ここで再びT1はバンピックを1戦目にかなり寄せてきた。ADCとSUP、そしてTOPからJGまで1戦目と同じ構成でアッシュ、レナータ、ヴァイ、グラガスを再起用してきたのだ。唯一1戦目と異なるのはMIDのFakerがアカリを起用した点だろう。
これに対してGEN側は1戦目のような近接ファイター構成ではなくアーリとエズリアルを出してレンジチャンプをしっかりと軸にすることで「偏った構成じゃなければ負けないよ」と言わんばかりの構成。序盤のインベイドから積極的に動き、TOPのZeus選手からファーストブラッドをADCであるPeyz選手のエズリアルに入れる形で最高のスタートを切った。
しかし結果は1戦目同様、いや、1戦目以上に圧倒的な戦力差でT1の圧勝だった。上図のStatsに出ていないが、T1はヴォイドグラブ6匹とヘラルドと序盤のトップサイドのオブジェクトを全て取得しており、ドラゴンも後半は全て取得、圧倒的な戦力差で完封する一戦だった。
この結果には、1戦目同様得意とする構成でしっかり仕上げてきた連携が機能していたことに加えてMIDのFaker選手の好調も上げられると思う。アカリで序盤のアーリをしっかりと押さえるのはなかなか大変なはずでしかも対面のChovy選手は少なくともLCKサマーシーズンにおいては世界でも最もアーリが上手いのではないかと思われるMIDレーナーだと思うのだがそのChovy選手のアーリを完封し、明かりの中盤~後半にかけてしっかりスケールしてオブジェクト周りの集団戦では常にキルプレッシャーを出していた。
GENのJGチャンプであるノクターンは攻勢に回るととても強いチャンプなのだが、こうした相手側にキルプレッシャーが高く、且つ、ノクターンのRからのバーストで殺し切れない存在がいると一気に動きづらくなるチャンプでもある。
結果として1戦目以上の圧倒的勝利につながる結果となった。
【4戦目】
そして最終戦となった4戦目、こちらは上図に上げたようにSUPのパイクが意外性を感じるピックでもあり、対面のマオカイに対しては後半かなりキツイ側面もあるのだが、序中盤の圧倒的なレーンの強さをしっかりと活かし切り、中盤以降は集団戦そのもののダメージディールというよりはジャングル全体の視界管理とGEN陣営の動きを完全に察知&コントロールする役割として機能しきって勝ちを納めた形となった。
また他方では、キンドレッドJGに対してスカーナーを出されてカウンターされた意趣返しに近いものも感じており、GENのJGであるCanyon選手が得意とするAPキャリージャングラーであるニダリーをタンキーでモビリティの高いスカーナーと視界管理力の高いパイクでしっかりと迎撃した形にもなったように見える。
個人的には今のプロシーンのメタでニダリーはあまり合致していないように感じており、Canyon選手の得意チャンプだからこその選択だったと思うが、WorldsにおけるT1は世界で最もジャングル周りの視界管理とオブジェクトコントロールを5人全員で意識している強いチームであるわけで、個の力を活かしやすいニダリーのようなチャンプは「強いT1」には出してはいけないチャンプではなかったのかと思う。
しかし、1戦目と3戦目の対比、そして2戦目と4戦目のスカーナー対キャリージャングラーの対比など、非常に面白いプロの意地と誇りをかけた戦いを見せて頂いた気もしており、本当に眼福だった。
そして最後に、どのような構成と戦略もMIDが破綻していたら恐らく機能しないはずであり、JGを基点としたチーム5人でのオブジェクト&視界コントロールを成立させる大前提として、Faker選手が世界最高峰MIDレーナーとして、Chovy選手と同等かそれ以上のパフォーマンスを見せ続けたこともこの対GEN戦勝利の間違いなく大きな要因であったと思う。惜しみない賛辞を送らせて頂きたい。
そして、約20時間後に控えたBLG戦を制してT1によるWorlds連覇を是非見届けたいところだ。